ねっとりとからみつく唾液が彰の性欲を誘った。


蘭はハッと我に返り、彰の指を口から離すと「包丁を使うのは難しいので、明日ピーラーを買いに行きましょう。それから出血ですけど大丈夫ですか?」と、早口に質問した。


それは今しがた自分のしていたことを隠すようなそぶりだった。


「このくらい平気だ」


彰はそう答え、絆創膏を探すために背を向けた蘭の体を抱きしめた。


鍋は沸騰し始めていて音がしていたが、2人とも気がつかない。


まるでそこまで時間が止まってしまったかのような空間だった。


蘭は彰にきつく抱きしめられて身動きが取れなかった。


それなのに心臓だけは暴れ周り、自分の意思ではどうにもならない。


彰はそのまま蘭をキッチンの床に押し倒した。


蘭の首元に顔をうずめ、片手で蘭の服を脱がしていく。


蘭はぼんやりと天井を見上げ、彰の体のぬくもりを感じていたのだった。