案の定彰よりも早く皮を剥き終えて、一口大に切り始めた。


トントンと小気味いい音を響かせながらニンジンは小さくなっていく。


その間に鍋を用意して、湯を沸かし始めた。


続いてネギだ。


そう思って野菜室からネギを取り出したとき彰が「いてっ」と小さく声をあげた。


ハッと顔を上げて彰にかけよる。


「指、切っちまった」


心配していたことが起こってしまった。


彰の人差し指から鮮明な血がプックリと膨れ上がってきて、それが流れ落ちていくのを見た。


蘭は咄嗟に彰の手を掴み、その指を自分の口に押し当てていた。


舌で血を舐めとり、そのまま指を口に含む。


彰の地の味が口内にジワリと広がっていくのを感じる。


彰は驚いたように目を見開いたが、恍惚とした表情の蘭を見てすぐに表情を変
えた。


なにかを我慢するような、痛みを伴ったときのような、なんともいえない艶美な顔。


「俺が襲ったときも、怖がってなかったよな」


彰のそんな言葉は蘭には聞こえていなかった。


ただ一心不乱に彰の指を舐めている。