次に蘭が気になったのはベッドだった。


いつも彰が眠っているベッド。


この掛け布団やマットレスもずっと洗濯したり、干したりしていないみたいだ。


触れて見ると、少ししっとりとしている。


蘭は知らずにゴクリと生唾を飲み込んでいた。


そっとベッドの上に上がり、うつ伏せになって彰の枕に顔をうずめる。


男の汗臭いにおいがしみこんでいる。


蘭はまた自分の体の芯がうずくのを感じた。


自分はずっとこの匂いがする人間を欲していたのだと感じ、感情が赴くままに身をよじらせた。


熱い吐息が漏れたとき、浴槽のドアが開く音が聞こえてきて慌てて飛び起きた。


そして床に散らばっている本やCDを丁寧によけていく。


そうしている間に彰が部屋に戻ってきて「風呂、開いたよ」と、声をかけてきた。


蘭はなんでもないように微笑んだのだった。