「最初の頃はちゃんとゴミ出しをしていたんですか?」


蘭は手を休めずに聞いた。


彰は昔を思い出すように何もない空間に視線を投げ出し、そして首をかしげた。


「どうだったかな。何度か出したとは思うけど」


それはもう記憶にないくらいに昔のことだった。


着るものがなくなってしまったら困るから、洗濯だけはしていたけれど。


「そうですか」


蘭は呆れた風でもなく、せっせと手を動かす。


一円にもならない作業なのにどうしてこんなに頑張ることができるのだろうと、彰は疑問に感じた。


とはいっても蘭は自分のためにこんなことまでしてくれているのだ。


自分が手を休めるわけにはいかない。


「それにこの家、古いものが多いですね」


「あぁ。元々の持ち主のものがそのまま残ってるんだ。タンスやテーブルは重
たいものばかりだ」


蘭はうなづいた。


昨日和室を掃除したときにあの一枚板のテーブルを動かそうとしたが、とても無理だった。