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朝ごはんは買ってきた卵とウインナーを焼くことにした。


「スクランブルエッグと、目玉焼き、どっちがいいですか?」


「目玉焼き」


彰の要望にあわせて目玉焼きを作ることにした。


丸いフライパンを取り出し、油を引く。


フライパンが温まったところで先にウインナーを投入した。


切れ目を入れて火を通りやすくしている。


ウインナーが焼けてきたら空いているスペースに卵を落とした。


卵は半熟が好きだということなので、焼き時間は短めだ。


その間彰は2人分の茶碗を用意して、炊きたてのご飯をよそっていた。


更に箸と、目玉焼きを乗せる白いお皿を用意する。


「ありがとうございます」


ちょうど焼き終えた目玉焼きを、蘭がお皿に移して行った。


焼きたてのいい香りがキッチンに充満している。


2人で並んでいただきますと言えば、本当に家族か夫婦のように見えてくる。


彰は半熟卵をそのままホカホカご飯の上に乗せて、買ってきたダシ醤油をかけた。


その上で卵を割るとトローリとした黄身がご飯に絡みつく。


少し焦げ目のついた白身の部分を箸で崩して、ご飯に混ぜ込む。


「すごい、半熟卵かけご飯だ」


蘭が言うと彰は笑顔でうなづいた。


「施設でよく食べてたんだ」


その言葉に蘭が箸をとめた。


「施設?」


驚いて聞き返す。


「あ、いや。なんでもない」


彰は左右に首を振り、半熟卵かけご飯をかき込んだのだった。