キャップをかぶるときに蘭がマジマジと見つめてくるので「どうした?」と聞いたが、欄は黙って左右に首を振っただけだった。


それから2人で昨日と同じ激安スーパーへ向かい、ある程度の食品を買いだめした。


野菜に肉に魚。


それに簡易的なカップラーメンなんかも。


これだけあれば2人で2、3日は暮らすことができる。


蘭が重たい袋を持ったとき、隣から彰が手を伸ばしてそれを受け取った。


「これくらい俺だってもてる」


そう言って蘭に軽いほうの袋を任せた。


今日は体調がいいし、気分だって悪くない。


蘭は素直にそれに従い「ありがとうございます」と、頬を赤らめた。


これが誘拐された被害者なのだと言っても、きっと誰も信じないだろう。


2人で肩を並べて帰路を歩いている間、蘭の心はずっと浮き足立っていた。


一緒に買い物をして、肩を並べて帰る。


しかも同じ家にだ。


はたから見たらカップルとか、もしかしたら若い新婚夫婦だと思う人だっているかもしれない。


そう考えるとまた鼻歌が出てきた。


「それ、流行った曲だよな」


今度は止めることなく、彰は聞いた。