どうやってあの頑固がカビを取ったのだろうと彰には不思議で仕方がなかった。


湯船にお湯をためて入ると、大きなため息が出た。


カビや汚れが気になって、いつもシャワーだけで終わらせてきたのだ。


でもこうしてお湯に肩までつかることで生き返る気がする。


シャワーでかまわないと思ってきたけれど、実は大切なことを怠ってきたのかもしれない。


体の汚れを落としてサッパリすると、脱衣所に着替えが準備されていた。


それは何ヶ月もの間投げっぱなしにしてあったパジャマで、蘭が洗濯までしてくれたのだとわかって、少し照れくさくなる。


「着替え、ありがとう」


キッチンでお茶を飲んでいた蘭に声をかける。


すると蘭は照れたように頬を赤らめた。


まるで夫婦みたいだと思ったのだ。


「あたしもお風呂入ってきます。彰さんは無理せずに寝てください」


「あぁ」


答えて、ふとテレビに視線を向けた。


今の子には珍しくてテレビはつけていなかったようだ。


スマホも取り上げてしまっているし、暇じゃないのか。


そんな疑問を感じている彰の横を通り抜けて、蘭はお風呂へ向かったのだった。