外で食べることはもちろんある。


だけどそういうことではなくて、こうして家で食卓を囲むこと自体だとても久しぶりなことだった。


不意に、目の奥が熱くなった。


我慢する余裕もなく視界が歪んで、涙が浮かんできているのだと理解した。


どうしにかそれが零れ落ちてしまわないように、食べることに専念した。


「おいしいですか?」


蘭は彰の涙に気がついているのかいないのか、暢気に聞いてくる。


彰はただうなづいた。


なにか言葉を発すれば、そのまま子供みたいに泣いてしまいそうだったから。