彰に目を通してもらってから捨てるつもりなのだろう。


ほとほと呆れながらテーブルの前に座り、それらを確認していく。


小型ゲーム機に、充電器、クリアファイルに、大学で使っている教科書やノート。


その中に混ざって入院案内のパンフレットを見つけて、彰は手を伸ばした。


余命宣告されたあの日以来、一度だけまた病院を訪れた。


その時にはすでに入院する気なんてなかったのだけれど、痛みを取る為の薬だけもらいに言ったのだ。


その時にまた同じように渡されたものだった。


死を待つ人が、穏やかな最後を迎えるための病院。


そこには年をとった人ばかりでなく、彰のような若い患者も沢山いるということだった。


説明をしているときの医師の表情は冗談だと思うくらい穏やかで、優しいものだった。


医師が焦れば、患者が焦ってしまうからだとわかっている。


だけど医師の言葉は芝居地味で聞こえて、彰にとっては劇を見せられているような気分になった。


「入院、するんですか?」


後ろから声をかけられて振り向くと、蘭が立っていた。


その表情はひどく不安そうだ。


なにがそんなに不安なのだろう。