途端に体がふらついて、椅子に座り込んでしまった。


体調が悪い上に蘭の行動に理解が追いつかず、メマイを感じた。


すると蘭は「大丈夫ですか?」と、心配しながら彰に水を差し出してきた。


彰はそれを一気に飲み干す。


少しだけ生き返った気がした。


「カレーまで作ったのか」


「……はい」


「俺のために?」


「そうです」


蘭は躊躇なくうなづく。


彰はその返事につい笑ってしまった。


ここまでくるともうなにがなんだかわからない。


蘭はおかしなところがあると思っていたが、そんなレベルじゃないかもしれない。


「なぁ、どうして逃げない?」


もう1度同じ質問をすると、蘭は驚いたように彰を見つめた。


「だって、あたし言ったじゃないですか。ここで、一緒に暮らしますって」


そう言えば、そんなことを言っていた気もする。


だけど、本当にそんなことをするなんて思ってもいなかった。


自分が体調を崩して寝込めば、さっさと逃げるものだと思っていた。


だけど蘭はここにいた。


宣言どおり一緒に暮らすようで、あれだけ汚れていた部屋をピカピカに磨き上げていた。