ちょうど蘭がカレーを作り終えた頃、彰は目を覚ましていた。


自分はいつものベッドに横になっていると気がついても、すぐに起き上がることはできなかった。


体はズッシリと重たくて、なかなか言うことを聞いてくれない。


こういう日はもう動かないことが一番だ。


無理して動いてもいいことなんてないし、なによりすべてのやる気が失われてしまうから。


もう一度眠ろうと目を閉じたとき、彰の鼻腔をくすぐる匂いがあった。


「……カレー?」


つぶやき、目を開ける。


どうしてカレーの匂いなんかがするんだろう?


どこか、近所の家の昼飯か?


それにしては匂いが強いか……。


そこまで考えて、ハッと息を飲んで上体を起こした。


そういえば蘭はどうした?


地下室から俺をここまで運んだはずだけど。


ようやく蘭の存在を思い出した彰はどうにかベッドから起き出した。