時間があればあったで、ついスマホを取り出して確認してしまう。


今はスマホも没収されているから、ただひとりの時間が流れていくだけだ。


蘭はさきほど借りた帽子を手に取り、眺めはじめた。


下駄箱の上に置かれていた帽子だから、きっと彰が普段から愛用しているものなんだろう。


もしかしたら、自分を誘拐するために使ったのかもしれない。


そう思うと蘭の胸はギュッと説明気分になる。


彰がどれだけ自分のことを考えて、準備してきたのか。


そんなこと全然知らなかった自分が腹正しくもある。


蘭はギュッと帽子を抱きしめたのだった。