脱衣所には脱ぎ散らかされた洗濯物が山になっていて、足の踏み場もない。


タオルを取ったとき、蘭は衣類を踏みつけて中に入ったのだ。


「よしっ!」


蘭は自分に気合を入れるように呟き、再び腕まくりをした。


そして洗濯機へと近づく。


洗濯機の上のホコリを雑巾でふき取り、スイッチを入れる。


ピッと音がして電源が入る。


どうやら壊れてはいないみたいだ。


横にある棚から洗剤を取り出して見ると中身はまだ残っている。


これで洗濯もどうにかなりそうだ。


蘭は足元の洗濯ものを次々と洗濯機の中に放り込んでいく。


といっても、色物とそうじゃないものくらいの仕分けはした。


そうして一度洗濯機をまわしておいて、浴室へ通じるドアを開いた。


浴槽も昔ながらの古いもので、幅が狭くて高さのあるものだ。


ほとんど正方形といっても良いかもしれない。


残念だけど足は伸ばせそうにない。


蘭はまず浴室の窓を開けて、換気扇も回した。


湿気であちこちカビが生えているのがわかる。


これはさすがに力づくで落とすことは難しい。


なにか洗剤がないかと見回してみれば、ちょうどカビを落とすための洗剤が目に入った。


赤いパッケージのそれを手に取り、浴室中に巻くことにした。


泡で出てくるタイプのそれを振りかけておけば、数時間で黒ずみはキレイに消えてくれるはずだった。


ついでに洗面器の裏や椅子の裏まで吹きかけておくことにした。