その途中で記憶は消えている。


蘭が意識を失っている間に、犯人は蘭をこのわけのわからない部屋につれてきたのだ。


蘭は自分の歯がカチカチと鳴っていることに気がついた。


寒いのではない。


状況を理解するにつれて沸いてきた恐怖心からだ。


自分はこれからどうなるんだろう。


自分はこれからなにをされるんだろう。


誘拐犯の目的を考えてみると、一番に思い浮かぶのは身代金だ。


しかし、蘭の家はそこまで裕福な家庭じゃない。


お金目的で誘拐するなら、もっとお金持ちのお嬢様を狙うはずだ。


だとしたら、目的はひとつしかない。


女子高生の蘭を誘拐して、犯人がすること……。


おぞましい光景が脳裏をよぎって蘭は慌てて左右に首を振り、想像をかき消した。


そして、そうなってしまう前にここから逃げ出さないといけないと考えて、必死で体をゆすった。


うまくすれば拘束しているロープが緩んでくるのではないかと考えたが、そんなに甘くはなかった。


犯人は頑丈にロープを結んでいて、ゆすっただけでほどけてくるようなものではなかったのだ。


かといってこのまま拘束されているわけにはいかない。