万が一大切なものを捨ててしまわないように、一度手に取ったものをキチンと確認する丁寧さだ。


「カップラーメンや、お菓子の袋ばっかり」


掃除をしながら呟き、微笑む。


どんなものでも彰のものに触れることができるのは嬉しかった。


そして、彰の指をわざとなめたときのことを思い出す。


体の芯がゾクゾクして毛が逆立つ感覚。


蘭は大きく息を吐き出して、恍惚とした表情を浮かべた。


そして再び手を動かす。


なにより蘭にとって嬉しいことは、こんなに家が汚れているという事実だった。


こんなにひどい家に女友達や彼女を呼ぶことはできない。


もし呼んだとすれば、彼女が掃除をしているはずだ。


でも部屋の中は散乱したまま。


ということは、彰にそういう相手はいないということになる。


それは蘭にとって長年の悩みが晴れたような、すばらしい答えだった。


キッチン内のゴミをまとめるだけで、ゴミ袋2つ分になってしまった。


想像以上のゴミの量に疲弊しそうになるが、気を取り直してゴミ袋を庭へと運んだ。