「誰もいないんですね」


「俺1人で暮らしてる。一軒屋だけど、格安の借家なんだ」


説明すると蘭はひとつうなづいた。


「誰もいないなら、あたしがここにいても迷惑ではありませんよね?」


蘭の言わんとすることが理解できなくて、彰は首をかしげる。


蘭は彰の前で正座したかと思うと、突然頭を下げてきたのだ。


「あたしと一緒に暮らしてください」


「は……?」


彰は目を見開いて蘭を見つめる。


蘭はずっと頭を下げていてあげようとしない。


「お願いします! あなたと一緒にいたいんです!」


なにを言い出すんだこいつは。


唖然としていて言い返す言葉も出てこない。


それ以前に体調も悪く、追い返す力がでない。


それでもなにか言わないといけないと思い口を開けば、思いっきり咳き込んでしまった。喉に残っていた血が吐き出される。


それを見た蘭はハッと息を飲み、すぐにタオルを差し出してきた。


彰はそれを仕方なく受け取り、口に移動させる。


とにかく今は横になりたい。


「ここは空気が悪いので、上に行きましょう」


そしてなぜだか誘拐の被害者である蘭に肩を支えられて階段を上がって行ったのだった。