すべてを話し終えた後、俺はつい笑ってしまった。


我ながらなんてわがままで幼稚な思考回路をしているんだろう。


「笑えるだろ? たったそれだけのために、お前をここまで誘拐してきたんだ」


蘭を殴ったときの感触は今でも鮮明に思い出すことができた。


柔らかな肉にめり込んでいく自分の拳。


蘭はくぐもったうめき声を上げて苦しんだ。


それでも俺は攻撃をやめず、2度、3度と蘭を殴りつけて気絶させたのだ。


人を殴ったのも、初めての経験だった。


その時、鼻をすすり上げる音が聞こえてきて彰は顔を上げた。


見ると蘭が涙を流している。


彰はギョッと目を見開いて蘭を見た。


「なんで泣いてるんだ?」


「だって……あなたが死んじゃうなんて、そんな……」


ぐずぐずと鼻をすすり上げる蘭は本気で涙をこぼしている。