自分が死にたいから、誰かを巻き込む。


それは考えたこともないことだった。


今日余命宣告を受けた俺はただひたすら一人で苦しみながら死んでいくのだと思っていた。


だけどこの男は違う。


ひとりでんなんか死んでやらない。


世の中から受けた鬱憤を晴らして死のうとしたのだ。


結局自分は死ねなかったわけだから、世間からのバッシングは相当なものになるだろう。


だけどちゃんと死ねていたら?


バッシングされたとしても、死んだ後のことなんてきっとどうでもいいはずだ。


俺ならきっと、うまく死ねる。


そう思うとさっきまでの体の震えが止まっていた。


それところか血が沸き立つような感覚すらしてくる。


今まで生きてきてもいいことなんて少しもなかった。


好きなことや趣味はできたけれど、恋人がいたこともない。


自分が必要とされるのは友人から都合よく使われるときだけだし、死んだ時に悲しんでくれるかどうかも怪しい。


俺が死んだ後、俺という人間は簡単に記憶から消えていってしまうことだろう。


それなら最後にみんなの記憶に残るようなことをしてみてもいいかもしれない。


彰の顔には、知らない間に笑みが浮かんで来ていたのだった。