がん細胞はきっとずっと前から体の中にあったんだろう。


それでも俺にとっては突然の宣告だった。


体の中にあり、俺の一部になっても気がつかず、多少の不調を抱えながらも何事もなく過ごしてきた。


あるいは、もっと早くに発見されていれば、俺は死ぬことはなかったのかもしれない。


でももう遅い。


俺はガンと一緒の時間を長く過ごしすぎてしまった。


時間を戻ることはできないし、ガンを消すこともできない。


医師に従って入院するのが正しい選択だ。


そんなとき、不意に寝室のテレビがついた。


リモコンが布団の下になっていて、誤ってボタンを押してしまったのだ。


今テレビなんて見たい気分じゃないのに。


苛立ちを覚えながら布団から顔を出してテレビを切ろうとする。


その時、画面一杯に見知らぬ男の顔が映し出されて、なぜだか目がそらせなくなってしまった。


俺はリモコンを持ったまま、その男の顔に釘付けになった。