しかし、胸に耳を当てるとちゃんと心臓が動いていることがわかった。


よかった、まだ死んでいない。


少し迷った蘭だが、決心したように階段を駆け上がっていく。


そして男がいつも開けていたドアを開いた。


ドアを開いた先には長い廊下になっていて、右手には庭が見える大きな窓があった。


左手には閉ざされた障子があり、ここが少し古い民家であることがわかった。


障子を開けて部屋の中を除いた瞬間、蘭は軽く顔をしかめた。


部屋の中にはゴミがたまり、ハエが飛んでいるのだ。


どこからか生ゴミの臭いも漂ってきて、衛生的によくないことは一目瞭然だった。


しかし、こんなところで足止めを食らっている暇はない。


蘭はゴミだらけの部屋に足を踏み入れて、キッチンを探し始めた。


和室が2つ並んでいて、奥の和室の障子を開けると玄関へ通じる廊下へ出た。


蘭の靴はそこに転がっていて、無理矢理脱がされたせいかソックスが一緒に脱げていた。


蘭はソックスだけ履くとすぐに家の中に戻った。


男は倒れているし、外へ通じる道もわかった。


しかし、そこから脱出する気は更々ない。


蘭はとにかくあの男を助けたいと思っていた。