蘭は本気で悩んでいる。


次第に目の前がかすんで見えてきた。


少し横になったほうがいいかもしれない。


そう思った瞬間だった。


突然こみ上げてきたものを我慢することができなかった。


体をくの字に曲げて右手で口を覆う。


どうじに「ガハッ!」と声を出して血を吐いていた。


あぁ、やっちまった。


異変に気がついた蘭がなにか叫んでいる。


そうだ、あいつのロープを解いてやらないといけない。


このまま俺が死んだら、あいつは……。


そう思っても、もう男の体は動かない。


そのまま横倒しに倒れて、キツク目を閉じてしまった。


「どうしたの!? 大丈夫!?」


蘭が必死になって男に声をかけるが、反応はない。


男が吐いた血は灰色の床に広がり、血だまりを作っている。


「嫌だ! 死なないで!!」