「そう。昨日は大好きなサンドイッチを食べさせてくれたし、あなたって優しいのね」


男は動きを止めて蘭を見上げた。


蘭の目はキラキラと輝いていて嘘を言っているようにも感じられない。


やはり蘭は元々おかしな子だったんだろう。


それなら昨日からの余裕も納得できる。


蘭に仲間などいない。


けれど蘭は元々危機感すらないのだ。


それならそれで話は早かった。


さっさと死んで、それで終わりだ。


「さぁ、選べよ。どれで死にたい?」


蘭は目の前に並べられた道具を吟味するように見つめる。


「どの方法で死ぬのが早いのかな? あ、でもせっかくだから時間をかけたほうがいいのかな」


真剣に悩み、ブツブツと口の中だけで呟いている。


男は少し離れた場所でその様子を見ていた。


今日は起きたときから少し体調が悪くて、ベッドから起き上がることもやっとだった。


でも、今日自殺すると決めたのだ。


そのため道連れにする蘭を誘拐してきた。


ちょっと体調が悪いからといって先延ばしにはしたくない。


それに、どうせもうすぐ死ぬのだからこの体調不良ともおさらばだ。