「ひとりじゃ大変でしょう」


その声に驚いて振り返ると、更に驚くべき人物がそこに立っていた。


蘭は唖然として自分の母親を見つめる。


母親が立ち尽くしている蘭の横にかがみこんで、準備して来た道具を使い草むしりを手伝い始めた。


「お母さん、どうして」


「さっき言ったでしょう。ひとりじゃ大変だからよ」


なんでもないことみたいに言っている。


「でも……」


「わかってるわよ」


母親は蘭を見て言った。


「え?」


「彰くんのこと、本気で好きだったってこと」


そういわれて胸が一杯になった。


ちゃんとわかってくれていた。


ストックホルム症候群なんかじゃないって、理解してくれていた。


それが嬉しくて、涙で視界が滲んでしまった。