「その子を離せ!」


警官隊が彰へ拳銃を向ける。


やだ、やめて。


違うの。


あたしは好きでこの人と一緒にいるの。


そう伝えたかったが、喉に押し当てられたナイフのせいで声が出なかった。


「蘭」


彰は真っ直ぐ警官隊を見つめて言った。


「俺がやり残したこと……。俺はお前が好きだ」


彰はそう言うと同時に蘭の体を横へ突き飛ばした。


途端に警官隊が駆け寄ってくる。


彰はナイフを手から落とし、両手を上に上げた。


「彰っ!!」


蘭の叫び声は駆け寄ってきた警官隊たちによってかき消された。


「彰! 彰!」


近づこうとしても彰の体が警察官に取り押さえられ、引き剥がされる。


彰、あたしも彰のことが好きだよ。


もうずっと前から。


彰が引くくらい前から好きだったよ。


「6時32分、容疑者逮捕!」


カシャンッ。


冷たい手錠の音が朝の空気を振るわせた……。