聞くと、彰はゆっくりと体を起こした。


もう、体を起こすのも蘭の手助けが必要だった。


「俺がやり残したこと、それは……」


蘭と彰は見つめあう。


彰の次の言葉を待つその瞬間「見つけたぞ!!」路地の入り口でそんな叫び声が聞こえて、2人同時に振り向いた。


そこにはひとりの警察官の姿がある。


蘭は大きく息を飲んで立ち上がった。


蘭たちの後ろ行き止まりで逃げ道はどこにもない。


警官の叫び声を聞きつけて、すぐに応援がかけつけた。


彰が小さく舌打ちするのが聞こえてきて、次の瞬間には蘭の首元にナイフが突きつけられていた。


咄嗟のことで身動きが取れなくなり、蘭は隣の彰を見つめる。


彰はどうにか立っている状態で、警官隊をにらみつけた。


なにしてるの。


こんなことをしたら、本当にあなたは悪者になってしまう。


これじゃ本物の、誘拐だ……!


蘭は必死に身をよじって彰の手から逃れようとする。


しかし、どこにそんな力が残っていたのか、彰は片手で蘭の体を抱きしめるようにして拘束し、もう片方の手でナイフを握り締めたままだった。