時折彰の額に手を当てて熱を確認した。


熱は下がる気配がなく、彰は眠りながらも苦しそうに顔をしかめる。


そんなとき、蘭は鼻歌を歌った。


蘭がいつも口ずさんでいた歌は、彰も知っていたから。


唯一自分たちの共通点だと思えるその歌を歌うと、不思議と彰の呼吸は整い始めた。


そして、朝日が昇り始めた。


暗い路地裏で一夜を明かしても蘭は少しも怖くなかった。


だってすぐ近くに彰がいる。


彰と離れ離れになっていたときはあれだけ不安で、怖かったのに、その思いは嘘のように消え去っていた。


暗い路地に朝日が差し込み始めたとき、彰が目をあけた。


熱はまだあったけれど、苦しそうではない。


「キレイだな」