「誰かを道連れにしたとしても、死ぬときはやっぱり一人になる。今はそう思ってる」


蘭は返事ができず、彰の手を握り締めた。


熱を持った指先が握り返してくる。


「薬は?」


聞くと、彰は左右に首を振った。


袋の中を確認してみたけれど、彰の言うとおり薬は入っていなかった。


家から逃げるときに彰はもう決めていたのだろう。


自分の寿命はここまでだと。


「少し横になりたい」


彰に言われて、蘭はうなづいた。


本当はもっとマシな場所で横にならせてあげたい。


なんなら、すぐにでも救急車を呼んであげたい。


だけどそれは彰が希望しないことだと、蘭はすでに知っていた。


蘭は彰の頭を自分のひざに乗せて、横にならせた。


アルファルトの地面には空にした袋をシーツ代わりに広げて。