「どうして泣いてる?」


その声に蘭はハッと息を飲んだ。


声が聞こえてきたほうへ視線を向けると、路地の奥に人影が見えた。


その先は行き止まりのはずなのに。


「え……」


「俺を探してきたのか?」


路地に袋を置き、その上に座り込んだ状態で彰は言った。


「彰っ!!」


思わず大きな声を上げてしまい、すぐに両手で口を塞いだ。


でも夢じゃない。


間違いなく、今目の前に彰がいる。


「ストーカーってすごいんだな」


彰は呆れたような、でも嬉しそうな顔をして言った。


蘭は彰に近づいていき、そして変化に気がついた。


彰の顔がいつもよりはるかに青白い。


それに服や手に赤いものがついている。


「彰さん、それ、どうしたの?」


「もう呼び捨てでいいよ」


そう答える口の中も赤く染まっていることがわかり、蘭は息を飲んだ。


吐血したんだ!