☆☆☆

蘭が最後に訪れたのは彰が育った施設だった。


彰の話を聞いていて頭に浮かんできたのは、近所にあるこの施設だけだったから。


しかし、施設の前にも沢山の報道陣が集まっていて、ここも警備員の人ともみ合いになっている状態だった。


施設の中にはまだ幼い子供たちが沢山いるのだろう、警備員たちに混ざって先生たちが必死で報道陣を追い返している。


その光景を見て蘭はその場に崩れ落ちてしまいそうになった。


一番可能性が高いのはここだったけれど、こんな状況じゃ彰は戻ってこれなかったことだろう。


ためしに施設の裏へ回ってみたけれどそこにも報道陣たちでごった返していた。


これで、彰が行きそうな場所はすべて探しつくしてしまった。


アルバイト先が2件に大学に施設。


自分が知っている彰の行動範囲はこれだけしかない。


そう理解すると途端に笑いがこみ上げてきた。


自分は彰のなにを知っていたんだろう。


あれだけ熱心に付きまとっていたのに、なにも知らなかったんじゃないか。