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それから10分後、大学では講義が開始されて蘭は校庭へと出てきていた。


さっきまで学生たちでにぎわっていた校庭も、今では静かなものだった。


講義のない生徒たちが何人かいるだけだ。


その中にも彰の姿はなかった。


バイト先にも大学にも隠れていない。


あと残っている場所といえば……。


そこまで考えたときだった。


不意に目の前に人影が現れて蘭は立ち止まっていた。


そしてその人物に目を剥き、絶句する。


なんで?


どうしてここにいるの?


頭の中は真っ白になり、なにも考えられなくなった。


目の前にいる人物が信じられなくて。


「蘭、やっぱりここだったのね」


震える声でそう言ったのは、蘭の母親だったのだ。