彰の番号さえ知っていれば、こんな歯がゆい気持ちになることもなかったのに。


蘭は下唇をかみ締めて、最初に入った棟から出た。


次に探す場所として選んだのは隣の棟だった。


ここが一番大きな棟になるようで足を踏み入れてみると複数の生徒たちが入り混じっていて、少し躊躇してしまった。


だけど行かないわけにはいかない。


ここまできて彰のことを諦めるなんて蘭にとってはありえないことだった。


蘭は大きく息を吸い込み、胸を張って校内へと足を進めた。


蘭はまだ17歳だけれど大学生に見えなくはない。


本物の大学生でも、蘭より幼く見える子はいたりする。


堂々と胸を張って歩いていれば誰も蘭のことなんて気にしないはずだ。


そのときだった。


前から歩いてきた一人の女子生徒と視線がぶつかった。


蘭は咄嗟に視線を地面に移動させる。


女子生徒はそんな蘭の反応に眉を寄せて、小走りに近づいてきた。


蘭は恐怖を感じて思わず足を止めた。


「ねぇ、あなた」


声をかけられてビクリと体を震わせる。


目を合わせちゃいけないと思い、蘭は下を向いたままだった。


「どこかで見たことがあるんだけど、どこかで会ったっけ?」


そう聞かれて蘭は息を飲んだ。


もちろん蘭はこの大学生のことなんて知らない。