どうにか大学の構内に入り込んだものの、右も左もわからない。


学科や実験室などによって塔も別れているようで、見た目よりも入り組んでいることがわかった。


とにかく彰が通っていたはずの幼児教育学科を目指そうと思ったのだけれど、思うように行かない。


誰かその辺の生徒に聞いてみようかと思ったが、そんなことをすれば余計に怪しまれてしまうし、バレる可能性が高くなるだけだ。


蘭は自力で彰を探し出すしかないのだ。


仕方なく、最初に入った棟の教室をひとつひとつ確認していくことにした。


まだ授業開始時間ではないようで、生徒たちはみんな思い思いにくつろいでいる。


この時間だからまだ探しやすいけれど、授業が始まればそうはいかなくなってくる。


蘭一人が校内を歩き回っているわけにはいかない。


だからこの時間が蘭にとっても勝負だった。


しかし、探しても探しても彰はいない。


1階の教室2階の教室、この棟の最上階になる3階の教室。


そのどれもに彰の姿を見つけることはできなかった。


だけど学校内にあるのは教室だけじゃない。


もしも彰がどっかの男子トイレに隠れていたら、探すことは更に困難になってしまう。