「あ、今学生さんが来ました! すみませーん、お話をきかせていただけませんか?」


女性キャスターが蘭へ向けて声をかける。


蘭は視線をそらして早足で校門を抜けようとする。


しかし、その前にキャスターが立ちはだかりマイクを向けてきていた。


蘭は下を向き、必死に顔を隠す。


「学生たちの邪魔をしないでください!」


キャスターの後ろから大学の警備員が注意している。


蘭の背中には冷や汗が流れ、心臓は早鐘を打っていた。


これじゃいつバレるかわからない。


早くここを突破してしまわないと。


そう思ったとき、蘭の目の前にカメラが移動してきた。


どうしても学生のコメントを映像として残しておきたいのだろう。


蘭は咄嗟に横によけて、キャスターやカメラマンをすり抜けて走った。


「あ、ちょっと!」


キャスターの悔しそうな声が後方から聞こえてくるが、蘭は足を止めなかった。


大丈夫だよね?


今の、映っていないよね?


走って校内へ向かいながら蘭の心臓は今にも張り裂けんばかりだった。