「すみません、話の本題なんですが、彰さんがどこにいるかご存知ないですか?」


もしくはこの店にかくまっていないか。


その期待を込めて聞いたのだけれど、店長はまた大きなため息を吐き出して左右に首を振った。


「わからないね。うちと、もう一箇所アルバイトをしていたみただけれど、それ以外に行きそうな場所は知らない」


蘭はジッと店長の目を見つめてその話を聞いていた。


店長は一度も視線をそらさない。


きっと、嘘をついていないからだ。


「……わかりました」


「力になれなくて悪いね」


「いいえ」


うなだれて店長に背を向けたとき、後ろから声をかけられた。


「なぁ、あいつはいいヤツだろう?」


その質問に驚いて振り返る。


店長が含み笑いを浮かべている。


一般的な記者に投げかけられる質問じゃないことはわかっていた。


この人は、蘭のことを気がついている。


それでいてなにも言わずにいてくれているのだ。


蘭はマスクの下で下唇をかみ締めた。


こみ上げてくる涙を押し殺して大きくうなづいて見せて、そしてまた背を向けたのだった。