不安に押しつぶされそうになりながら次に蘭がやってきたのは、彰がアルバイトをしていた居酒屋だった。


蘭が誘拐された場所でもある。


ここまでやってくるとさすがに報道陣などの姿はなくて、蘭は一安心した。


しかし、彰のバイト先だったということがバレれば、ここにも彰の居場所はなくなってしまうだろう。


入り口に近づいてみるが、自動ドアは反応しなかった。


窓には営業時間が夕方4時からだと書かれている。


入り口のドアに耳を当てて中の様子を伺ってみたが、物音ひとつしない。


まだ仕込みの時間にもなっていないようだ。


蘭は横の路地に入ってしばらく待ってみたけれど、居酒屋の人が誰も来なかったのだった。