急に不安が広がっていき、蘭は慌てて和室へかけ戻った。


部屋の中にあるのは蘭のバッグ、それに必要なものを突っ込んできた袋。


その袋を開けてみるとキレイに彰のものだけがなくなっているのがわかった。


「嘘……」


蘭は彰が横になっていた畳に触れた。


すでに冷たくなっていて、体温は残っていない。


蘭はバッグを肩にかけ、袋を掴んで家中を探し回った。


キッチン、トイレ、お風呂。


どこにも彰はいない。


2階へ駆け上がって二部屋とも調べてみたが、やっぱり誰の姿もなかった。


あるのは落書きされた汚い部屋だけだ。


「なんで!?」


叫びながら空き家から飛び出した。


しかし、右に行けばいいのか左に行けばいいのかわからない。


咄嗟にスマホを取り出して彰に連絡をいれようとしたけれど、彰の番号を知らないことに気がついた。


その事実に全身の力が抜けていき、その場にズルズルと崩れ落ちる。


あれだけ一緒にいたのに。


何度も体を重ねたのに、彰の番号すら知らないなんて……。