そこで蘭は彰のバイトが終わるのを待って、後をつけ始めたのだ。


これで彰の家がわかる。


アパートか一軒屋か。


もしかしたら家族構成までわかるかもしれない。


はやる気持ちを抑えながら、彰に気がつかれないように尾行を繰り返した。


彰が何度か蘭を見たのは当然のことだったのだ。


蘭が彰を追いかけていたのだから。


しかし、そうしてたどり着いたのは彰の家ではなく、飲み屋街だった。


大学生っぽいし、これから飲み会などがあったとしても不思議ではない。


だけど飲み会といえば女の子との出会いもあるのではないかと、蘭は内心ヒヤリとした。


けれどそんな心配もなく、彰がここでもアルバイトをしているのだとわかった。


アルバイトを二箇所掛け持ちというのことは、彰はアパートかなにかでひとり暮らし。


親からの仕送りだけでは足らないのかもしれない。


だんだん彰がどんな人なのか見えてきたときのこと。


蘭はいつもどおりパン屋で彰を待ち伏せしていた。


しかし、いくら待ってみても彰は姿を見せなかった。


それならばと居酒屋で待ち伏せをしたが、やはり姿を見せなくなった。