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蘭が初めて彰を見かけたのは1年前のことだった。


高校1年生にあがったばかりだった蘭は学校帰りに小腹を満たすために、パン屋に寄り道をした。


そのパン屋は昔からあり、蘭のような学生でよくにぎわっている場所だった。


お店に入った瞬間ただようパンの香りに頬がゆるむ。


壁沿いに並べられた棚には惣菜パンや菓子パンなどがところ狭しと置かれていて、部活終わりの生徒を狙ってか、作りたてのものが多かった。


かくいう蘭も部活終わりの一人で、この頃の蘭はバドミントン部に在籍していた。


1年生の間は簡単に部活を休むこともできないし、部活終わりの片付けまで担当するのが常識とされている部だった。


そのため帰りはいつもお腹がペコペコになっているのだ。


そんなときに、このにおいに誘われない高校生なんて滅多にいない。