その強い気持ちと共に、裏口から外へ出た。


こちらも塀に囲まれているため、人には見られることなく出ることができた。


2人は足音を殺し、人の声が聞こえない方向へと走った。


細い路地を選びとにかく家から遠ざかることだけを考えて。


家から逃げ出すのがもう少し遅ければ、記者たちが脚立を使ってでも家の中を確認していたかもしれない。


そこは不幸中の幸いだった。


彰は時折足を緩めて苦しげな声を上げた。


「大丈夫? 少し休憩する?」


「いや、まだ大丈夫だ」


蘭が声をかけるたびに彰はそう言い、また走り出した。


蘭は彰の分の荷物まで持ち懸命に走った。


誰もいない場所へ。


2人きりでいられる場所へ。


そうしてたどり着いたのは廃墟だった。


彰の家からまだそんなに離れていない場所だったが、一旦身を隠すには最適な場所だ。


幸いその家の窓が割られていて、侵入するのも簡単だった。