記者からの質問に淡々と答えている。


蘭も彰も、2人とも無言でテレビ画面を見つめた。


蘭がその後いなくなり、その日の内に両親が行方不明届けを出していたこともわかった。


そして……。


「びっくりしちゃったわよ。だって、行方不明になっている子そっくりなんだから!」


画面上に出てきたのはエプロンをつけた40代くらいの女性だった。


その人には見覚えがあった。


あの日、彰と2人並んでゴミ捨てに行った時に会った主婦の人だ。


彰がうめき声を上げて頭を抱えた。


「一緒に歩いていたのはね、この近所の子で――」


いたたまれなくなり、蘭は強引にリモコンを奪い取ってテレビを消した。


再び周囲は静かになったが、同時に外の喧騒が耳に入ってきた。


「ここにいちゃいけない」


蘭は立ち上がり、真新しいゴミ袋に菓子パンをつめ始めた。


「なにしてる?」


彰は顔を上げ、唖然とした表情で蘭を見つめる。


「ここから逃げるの。早く!」


「逃げるって、なに言ってんだ。蘭はただの被害者だ、逃げる必要なんてない」


その言葉に蘭は一瞬動きを止めた。


そして大またで彰に近づくと、その唇にキスを落とす。


「あたしは被害者じゃない。ここに来たとき、あなたの顔を確認した瞬間から、被害者なんかじゃないんだよ」