それでも彰は満足そうで、そのまま2人でフードコートへ向かった。


「ちょっと待ってよ、ここで食べるの?」


蘭は目を見開いて彰を見た。


「あぁ。腹減っただろ?」


「それはそうだけど……」


2人は今日も大きなマスクをつけて外出していたが、こんなひと目のあるところで食事をしたら本末転倒だ。


ここは彰の家からも蘭の家からもそう遠く離れていない。


知り合いがいても不思議じゃない場所だ。


不安を感じてフードコートの入り口で立ち尽くす蘭の手を彰が掴んで歩き出した。


真っ直ぐバーガーショップへと向かう。


昼時ということもありバーガーショップには長い列ができていた。


「ねぇ、本当にここで食べるの?」


蘭は顔を伏せ気味にして彰に聞く。


しかしその声は喧騒に掻き消えて、近くにいる彰まで届かなかったのだった。