ここで蘭の申し出を断る事だってできた。


なにせ自分は蘭を誘拐してここまで運んできたのだ。


蘭に言うことを聞かせることは安易なはずだった。


それなのに……。


「わかった」


男はうなづいていた。


その瞬間蘭の表情がパァッと明るく晴れていく。


「ありがとう!」


明るい蘭の声がコンクリートの部屋の中にこだまして、男は顔をしかめた。


そしてせめてもの威厳とでも言うように「ただし、お前の拘束は解かない」


と、言ったのだった。