お出迎えなんてずっとなかったことだから、蘭はその場で固まってしまった。


それに、今朝とは違う服を着ている。


足首まである青いロングワンピース。


そんな服、父親がいたときだってあまり着ていなかったのに。


明らかに様子が違う母親に困惑していると、早く着替えてくるように言われてようやく玄関を上がった。


「できるだけキレイな服を選びなさい。今日は外食だからね」


そう言われたので、蘭はこの前買ってもらったばかりのTシャツを取り出した。


買ってもらったといっても蘭の意向は聞かれていない。


蘭の私物はすべて母親が勝手に決めて勝手に買ってくるようになっていた。


なにかが欲しい。


こっちのほうがいい。


そんなこと、今の蘭にはとてもじゃないけれど言えないことだった。


Tシャツを着てジーンズを手に取ろうとして、動きを止めた。


さっき見た母親はワンピース姿だった。


それなら自分もスカートの方がいいかもしれない。


そうしたほうが、親子で並んだときも見栄えもよさそうだ。


そう考えて蘭はブルーのフリルスカートを手に取った。