その頃から、母親は本当に鬼になった。


表向きにはかわいそうな未亡人。


しかし家に帰れば蘭に手を上げる鬼。


「お前が殺したんだ! あの人を返せ!」


そう怒鳴りながら、蘭の体を拭くの上から殴り、蹴る。


だけど時々乱暴に服を脱がされて、素肌の上に熱湯をかけられることもあった。


「ごめんなさい! ごめんなさいお母さん!」


蘭は必死に謝り、少しでも身を守ろうと背中を丸めて顔と頭をガードしていた。


だからその頃にできた傷のほとんどは、背中を中心として広がっている。


「あんたは鬼の子よ!」


母親は蘭を鬼と呼んだ。


あの人を奪った鬼の子だと。


蘭は痛みに耐えながら、鬼ババの子である自分もやっぱり鬼だったんだと理解した。