その日、蘭は一緒に帰る子がいなくてひとりで帰路につくしかなかった。


男子たちはまだグラウンドで遊んでいたけれど、今日はとても一緒に遊ぶ気分じゃなかった。


ひとりの帰り道は寂しいものだった。


周りを見ればどの子も沢山の友人たちと一緒に帰っている。


その輪の中に入れたらいいのにな。


そんな風に感じながらひとりで歩いて帰る。


完全にひとりなら寂しさも感じないけれど、集団の中のひとりは孤独だ。


集団から離れようと思って少し早足になったとき、前方からよく知っている顔が歩いてくるのが見えた。


蘭はその人物に大きく目を見開き、そして駆け出していた。


「お父さん!」


「蘭。ちょうど帰る時間だと思ったから、迎えにきたよ」


父親はそう言って蘭の頭をなでた。


この日は偶然父親は休みで、何の気なしに蘭を迎えにきてくれたのだ。


ただの父親の気まぐれだった。


だけれど蘭はそれに救われた。


一瞬にして回りの子たちが気にならなくなって、父親の腕を掴んで一緒に歩き出す。