「誘拐犯の俺には言えないこと?」


その言葉に蘭はハッとして振り向いた。


そんな言い方をするなんてずるい。


そんな風に言われたら、話さざるを得なくなると彰だってわかっているはずだ。


彰は蘭の両肩に手をやり、体を自分の方へ向かせた。


そして、傷口にキスを落とす。


そこから全身へ向けて熱が放射されていくような気分になった。


「聞かせて。ゆっくりでいいから」


彰はそう言い、小さな傷をひとつも見逃さないように、蘭の体に口付けを続けた……。