彰からすればたいした言葉ではなかったようで、それに気がつかずに蘭を追い越していってしまった。


蘭は慌てて追いかける。


「もし、あたしと結婚できたらどうしますか?」


帰りがけの道でそう質問された彰は首をかしげて蘭を見た。


どこからどう見ても美少女の蘭。


でも少し、いや随分と変わっていることはもうわかっていた。


長く一緒にいるのは大変そうだ。


彰の本音はそうだったが、今の自分が蘭のおかげで救われていることも事実だった。


「もちろん嬉しいけれど」


彰の言葉に蘭は目を輝かせた。


軍手をつけたままの両手で口を覆った。


「本当に!?」


今にも飛びついてきそうな勢いの蘭。


「あぁ」


彰はうなづいて家の庭へと回る。


4つのゴミ袋を出しただけじゃ全然キレイにならないから、もう一往復するつもりだ。


8つ分のゴミ袋を出せばさすがに少しは庭がスッキリして見えるはずだ。


しかし、彰がゴミ袋を手にしても蘭がその場に立ち尽くしている。


両手を胸の前で握り締めて、まるでなにかを祈っているようなポーズで。


「どうした?」


「い、いえ。なんでもないです!」


彰の声に反応して蘭は慌ててゴミ袋を掴んだのだった。