首をかしげて聞き返す。


その目にはまだ涙が浮かんでいて、恐怖の色は少しも感じられない。


彰が蘭に素顔を見せたときからそうだった。


蘭は一度も恐怖を表現したことはなかった。


「本当に、俺が怖くないんだな」


彰は蘭に手を伸ばし、その頭をなでて見た。


蘭は心地よさそうにされるがままになっている。


誘拐犯と被害者。


この関係が永遠に続いていけばいいな。


気がつけば、彰自身もそんな風に感じるようになっていたのだった。