彰の話をすべて聞き終えた蘭は、また頬に涙を流していた。


誘拐犯の話を聞いて泣く被害者なんて珍しい。


「涙もろいんだな」


彰だって呆れ顔で蘭を見ている。


しかし蘭は本気だった。


本気で涙を流して、本気で彰の心に寄り添っている。


「もう、大丈夫だからね」


蘭はそう言うと血から強く彰の手を握り締めた。


その力は少し痛いくらいで、彰はギョッと目を見開いた。


「あたしはあなたのそばにいるし、あなたを都合よく利用したりもしない」


蘭の言葉に嘘はなかった。


実際、彰の話を聞いたあとの蘭は俄然この人のことを守ってあげなければならないと感じていたのだ。


彰はそんな蘭を目の前にして瞬きを繰り返し、そして小さく笑った。


「俺のこと、怖くないのか?」


「どうして?」