前面コンクリートで覆われたこの場所は、先生の親戚が木工を生業としていたため作られた部屋だった。


ここで木工細工に精を出していたとわかるように、大きなテーブルがひとつある。


道具や木片などはすでに片付けられているが、ここでいつくもの作品が生まれたことは安易に想像できた。


彰はキッチンから椅子を一脚持ってきて、地下室に置いた。


蘭を誘拐してきて、ここに拘束するシュミレーションを脳内で行う。


誘拐するということは、ここまで連れてこないといけないということだ。


蘭の背後から近づいて、まずはその口を塞ぐ。


そして何度か殴りつけて気絶させよう。


その後はどうする?


人間を担いで移動するわけにはいかない。


かといって車は持っていない。


どうやってこの家まで移動してくるか……。


考えたとき、彰はこの庭に一輪車があることを思い出した。


さっそく庭へ出て見ると雑草が生え放題で、一輪車はその陰に隠れてしまっていた。


どうにか引っ張り出してみると少しサビついているもののちゃんと使えることがわかった。


気絶した蘭を麻袋かなにかにつめて、一輪車に乗せて家まで運ぶ。